平成22年度厚生労働省障害者保健福祉推進事業 医療ニーズの高い障害者等への支援策に関する調査

本事業は、全国訪問看護事業協会が厚生労働省の公募事業で内示を受けています。

 事業目的 

近年の医療技術の進歩等により、医療ニーズの高い子どもたちも在宅で生活するようになってきている。
平成21年度の調査において、乳幼児期の入院中の多くの子どもたちは、病院から直接在宅・地域生活に移行しており、
在宅支援室などをもつ多くの病院では、病院関係者、地区担当保健師、訪問看護ステーション等が中心となって入院中の経過に関する情報共有や退院後の生活調整が行われていた。
しかしながら、病院・施設側の業務の煩雑さや認識不足から、地域関係者との連携が退院・退所日直前となって事前に調整が十分にできないことや、
病院・障害者支援施設ともに在宅への移行がスムーズに進まない状況があった。
さらに、医療ニーズの高い子どもの在宅生活では、子どもたちをケアしている介護者(多くは母親であるが)の多くは、
医療や福祉の専門家の訪問サービスを受けていても24時間外出もままならない状況で子どもの世話を行っている。
そこで、本事業においては、医療と福祉の協働サービスの提供による介護者(家族)の心身の負担を軽減すると共に、
医療ニーズの高い子どもたちの地域生活での活動範囲を広げることにより、子どもや家族の療養環境の向上を目指すことである。
具体的には、現在個々に利用している訪問看護と訪問介護のサービスを、連携サービスによる具体的支援として提供する方法を検討すること、
また連携サービスを適時適切に提供するためにマネジメントする生活支援コーディネーターの育成支援について検討することである。
今年度はその基礎調査として以下の実態を明らかにし、円滑な地域社会移行を実現可能とする支援のあり方について検討を行う。

 事業内容  

① 医療ニーズの高い子どもやその家族への支援を実施している訪問介護事業所の実態と具体的なサービス内容等を明らかにする。
② 医療ニーズの高い子どもたちにとって利用し難いと言われている児童デイサービスやショートステイ、移動支援事業などの福祉サービスの実態を明らかにする。
③ 訪問看護と訪問介護を同時に利用している子どもや家族の状況と利用内容の実態を把握するとともに、利用上の問題や訪問看護と訪問介護の連携上の課題を明らかにする。
④ 医療機関や施設からの退院・退所後に必要なサービスや社会資源の地域におけるマネジメントの具体的内容や実態、課題について明らかにする。の比較も行う。

 事業方法 

(1)質問紙調査
①訪問看護ステーションの概要調査(一次調査)
②訪問看護ステーション、訪問介護事業所、ショートステイ、児童デイサービスにおける詳細調査(二次調査)
③政令指定都市・中核市の障害福祉担当部署の地区担当保健師のサービスマネージメント・コーディネーター的役割に関する調査

(2)ヒアリング調査
上記の調査より、医療と福祉の協働によるサービス提供を実現している事例
(調査対象は訪問看護ステーション、訪問介護事業所、ショートステイ、児童デイサービス、政令指定都市・中核市の障害福祉担当部署の地区担当保健師・相談支援専門員等)を選定して行う。

 主任研究者 

事業の成果
本事業は、医療と福祉の協働サービスの提供による介護者(家族)の心身の負担を軽減すると共に、
医療ニーズの高い子どもたちの地域生活での活動範囲を広げることにより、子どもや家族の療養環境の向上を目指すことである。具体的成果としては、
① 訪問看護と訪問介護の連携サービスモデルの提案
② 連携サービス提供のための生活支援コーディネーターの育成支援プログラムの開発に向けた検討

 主任研究者 

聖路加看護大学 教授 及川 郁子